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EDITORIAL BLOG

ウェタプンガ1万1,000匹の野生復帰が示す、昆虫保全と飼育産業の接点

ウェタプンガ1万1,000匹の野生復帰が示す、昆虫保全と飼育産業の接点のイメージ

ニュースの概要

ニュージーランド固有の大型昆虫ウェタプンガが、1990年代にほぼ絶滅の状態まで数を減らしながら、1万1,000匹を超える個体が安全な環境へ放たれるところまで回復した。立役者は二つある。保護施設での計画的な飼育繁殖と、生息地からネズミなどの外来捕食者を取り除く取り組みだ。繁殖で個体を増やしても、放つ先に天敵がいれば意味がない。両方を同時に進めたことが成果につながった。クワガタやカブトムシの商業ブリーディングとは目的が異なるが、昆虫を人の手で殖やす技術という点では共通する部分が多い。

引用元: 絶滅寸前だった世界最大級の昆虫、飼育繁殖と外来捕食者対策で1万1,000匹超が野生復帰(Moneycontrol)

分析・見解

繁殖だけでは足りず、放つ先の環境整備が成否を分けた

ウェタプンガ復活の本質は、飼育技術そのものよりも、飼育と環境整備を一体で進めた点にある。昆虫は産卵数が多いため、飼育下で数を増やすこと自体は比較的たやすい。難しいのは、増やした個体を野外で生き残らせることだ。

ニュージーランドには、人間が持ち込んだネズミやイタチ類が広く定着している。もともと地上性の哺乳類がいなかった島で進化したウェタプンガは、こうした捕食者への備えを持たない。そのため、ネズミを排除した島や柵で囲った保護区を放逐先に選ぶ手法が取られている。

1990年代の危機から数十年かけて積み上げた成果

数が一気に増えたわけではない。1990年代に絶滅寸前とされた種が、1万1,000匹という規模に届くまでには、少数の個体の確保、飼育方法の試行錯誤、放逐先の選定という地道な工程があった。

類似の例として、日本のトキやコウノトリの野生復帰がある。いずれも飼育下での繁殖に成功した後、農薬の削減や水田環境の整備といった受け入れ側の改善に長い年月をかけた。ウェタプンガも同じ道筋をたどっており、保全が長期戦であることを示している。

昆虫は保全の対象として注目されにくい

鳥類や哺乳類に比べると、昆虫は保全予算が付きにくい。見た目が地味、あるいは敬遠されがちな種ほどその傾向が強い。ウェタプンガは世界最大級の重さを誇り、話題性があった。この知名度が資金や人材を集めた面は否定できない。

ここに、業界にとって見落とせない視点がある。人気のある昆虫には、保全と産業の両方で人が集まるということだ。クワガタやカブトムシは、まさに人気の高い昆虫である。愛好家の飼育技術や産地情報は、使い方次第で保全の力になりうる。

飼育が野生を守る側にも回る時代へ

従来、昆虫の採集と飼育は、野生個体群に負荷をかけるものと見られがちだった。しかし今回のように、飼育技術が絶滅回避の切り札になる例が増えれば、その見方は変わっていく。

もちろん、商業ブリーディングと保全目的の繁殖は別物だ。保全では遺伝的な多様性を保つため、血統の管理が厳しく求められる。一方、商業では見た目の良い系統を選んで固定することが多い。この違いを理解したうえで、技術と知見を共有できる部分を探すことが、これからの業界に求められる。

ビジネスへの影響

保全への関わりが、ブランドの信頼を高める

昆虫の飼育や販売に関わる事業者にとって、今回のニュースは社会的な評価の変化を知らせるものだ。昆虫を扱う事業が、環境への負荷ではなく、環境を支える側として語られる余地が生まれている。

具体的には、産地や血統の記録を丁寧に残すこと、国内外の外来種を野外に出さない仕組みを整えることが、取引先や購入者からの信頼につながる。説明できる流通を整えておけば、規制が強まった際にも慌てずに済む。

協力の入口は、小さな取り組みから始められる

いきなり大規模な保全活動に参加する必要はない。まず、販売価格の一部を地域の昆虫保全団体へ寄付する、飼育のノウハウを公開する、といった取り組みで十分だ。

展示会やイベントで、希少種の現状を伝えるコーナーを設ける方法もある。来場者の関心は高く、販売促進にもなる。ただし、保全の実績を誇張して宣伝すると、かえって信頼を損なう。実際に行った内容を、数字を添えて淡々と示すことが大切だ。

規制と倫理の動向を継続して確認する

希少な昆虫の国際取引は、ワシントン条約や各国の国内法で管理されている。保全の機運が高まれば、規制が強化される可能性もある。事業者は、扱う種の指定状況を定期的に確認し、輸入や譲渡の手続きを社内で標準化しておくとよい。

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